妻が私に何かをするように頼んだので、台湾語で「ほー」と答えたら、「ほーてらいそあNら!」という返事が帰ってきた。
どんな意味なのかと思ったら、「虎teh內山啦」(虎は山奥にいる)ということ。一体、何の話なのか?
ちょっと考えたら、この言葉遊びの意味が分かった。
台湾閩南語は中国福建省の泉州と漳州という二つの地域の言語が混ざったものであり、極大雑把に言って台北などの北部はどちらかというと前者に近く、南部と宜蘭は後者に近い。台北の混ざり方は福建省アモイ市のものに極めて類似していて、フィリピンやシンガポール・マレーシアなどの華人と問題なく意思疎通できる。戦後は台北市が台湾華語の中心地になったので、台湾のメディアで標準的なものとして扱われている台湾閩南語は、どちらかというと高雄・台南のものに近い。これは「台湾優勢腔」などと呼ばれている。
さて、この現在の台湾で主流派の台湾語では、「好」の発音がcenteringしていて、北京語読みの「赫」に近い。つまり、「はー」に近く聞こえる。
一方、台北で話される泉州寄りの発音では、lip roundingが入り、「ほー」と聞こえる。
日本に例えると、「箸」と言ったのが、他地方の人には「橋」と言っているように聞こえるのと似ているというわけだ。
それで、台北訛りで「いいです」と言ったのに、わざと「虎は山奥だ」と言ってからかう言葉遊びが成立するのである。
これに似た、泉州訛りと漳州訛りの違いを利用した冗談もいくつかあるが、ここでは書かないでおく。